マチノコト

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海辺の再生を通じて地域のつながりを生むーー宮城県七ヶ浜町の音楽フェス「SEVEN BEACH FESTIVAL」 #umizero

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東日本大震災では多くの海辺のまちが津波の被害を受けましたが、現在は単に復旧・復興というだけでなく、まちの魅力を今まで以上に引き出し、地域のつながりを深めていく取り組みが生まれています。

その中で、漁業が盛んだったり、海水浴場としてにぎわっていた海辺の再生は、ひとつの大きな課題。

宮城県七ヶ浜町では、美しいビーチの再生と野外音楽フェスティバル「SEVEN BEACH FESTIVAL」を通じたまちづくりが行われています。

美しいビーチのあるまち、七ヶ浜町

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七ヶ浜町は、宮城県中部に位置し、東北の市町村のなかで一番小さなまちです。人口は約1万9000人ほどで、東側と北側は松島湾に、南側は太平洋と三方を海に囲まれ、豊かな自然環境に恵まれた漁師町です。

海沿いに7つの集落があったことから、「七ヶ浜」という名前が付けられました。

元々七ヶ浜町は外国人避暑地としての歴史があり、その中でも菖蒲田ビーチは東北で一番 古い歴史があるビーチ。昭和70年代には年間20万人の集客があったほど賑わっていたそうです。

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しかし3月11日の東日本大震災で、七ヶ浜町は12mの津波で海辺地域は大きな被害を受け、一瞬にして凄惨な風景へと変貌。多くの人が訪れていた菖蒲田浜のビーチは、海を愛するサーファーや全国から集まったボランティアのおかげで以前の美しさを取り戻してきていますが、毎年行われていた海開きもできず、かつてのような賑わいはまだありません。

美しいビーチを取り戻し、次世代に継承していくために

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被災した海岸というイメージをポジティブなものに変え、「もう一度ビーチを素敵な場所と して蘇らせよう」と立ち上がったのは、地元の若者達でした。

SEVEN BEACH FESTIVAL実行委員会の共同代表を務める久保田靖朗さんは、こう語ります。

皆が本当に楽しいと思える空間を作り、人々の笑顔をビーチに取り戻したい!イベントを成功させ、新たな菖蒲田を作り出し、次の世代に渡していきたい!
そんなコンセプトで、みんなで野外音楽フェスティバルを立ち上げました。

こうして2013年夏に生まれたのが、七ヶ浜ビーチフェスティバル「SEVEN BEACH FESTIVAL」です。

菖蒲田の夏祭りの歴史は古く、震災以前からたくさんの人が関わり地区の行事を運営していたことから、協力し合ってこのフェスをつくりあげることは、地域の結束を深めていくことにもつながります。

地域のなかでも「子どもたちのためにも菖蒲田の文化を残していきたい」という思いで、協力してくれるひとたちがどんどん集まっていきました。

津波被害を受けた場所でフェスを開催するにあたって越えなければいけない障壁も多く、開催は困難を極めるなか、実行委員会で何度も話し合いを重ね、実現に向けて一丸となって準備をしていったそうです。

音楽、スポーツ、アートが楽しめるビーチフェス

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クラウドファンディングで開催資金を集め、2013年8月10日(土)、11日(日)に第一回目のビーチフェスティバルが開催されました。

実行委員会の想いに共感したアーティストによる音楽ライブ、ビーチでのサッカー大会のほか、子供達が楽しめるビーチサッカー体験や太鼓ワークショップなどが行われました。

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当日は宮城県内外から、老若男女幅広い世代のたくさんの参加者が訪れ、美しいビーチとフェスを楽しみました。

フェスが震災後の海に訪れるきっかけとなり、かつて海水浴やサーフィンのために通っていた七ヶ浜の海に久々に足を運んだ人も多く、「この海が好きだった」と昔の思い出がよみがえり、涙するひとも多かったそうです。

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昨年はフェス当日に台風が直撃し、残念ながら開催中止となってしまいました。当日の午後には出演者やスタッフが集まり、来年の夏もフェスを開催することを目標に決起集会を行ったそうです。

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再建設するため取り壊される防波堤に、七ヶ浜出身のアーティストが「七ヶ浜の過去から未来」をテーマにペイントをする取り組みも行いました。

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ビーチクリーンで綺麗な海を

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実行委員会のメンバーは、フェスの開催する時期に関係なく、定期的にビーチクリーンを実施しています。

海から流れ着いたペットボトルに瓶・漁具に発砲スチロール、バーベキューの残骸や花火のごみ。

菖蒲田のビーチはこれらのゴミ問題に悩まされており、たくさんのひとたちが協力し合わなければ綺麗にすることができません。

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毎回地元内外からたくさんの人が集まり、訪れたひとたちに美しいビーチを体験してもらえるよう、ビーチクリーンを続けているそうです。

フェスをきっかけにしたまちづくり

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今年も8月2日に開催される「SEVEN BEACH FESTIVAL」では、様々な新しい試みも行われます。

地元住民を中心とした様々なアクションのおかげで、震災前の活気を取り戻してきていますが、昨年5月に民間研究機関「日本創成会議」が決定した2040年代の消滅可能性都市には、七ヶ浜町も含まれていました。

このような状況に対して、これからの地域の未来を担う若い世代が一丸となってまちづくりに取り組んでいくため、フェスでは「菖蒲田未来会議vol1」も開催します。

フェス開催後に選挙があることから、フェスで集まった人々と菖蒲田の未来について語り合う場をつくり、意見をまとめて選挙候補者に提出する予定です。

またフェスの会場装飾は、地元の七ヶ浜中学校と向洋中学校 と協力して行っています。

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七ヶ浜中学校との協力は共同代表の久保田さんが「町づくりとイベント」という社会科の授業に招かれた時に、生徒さん達から学校行事に文化祭が無いという事実を聞き、「このイベントで文化祭の代わりに少しでも祭りづくりに関わって欲しい」という思いから始まりました。

フェスで会場に飾る大きな絵を、中学生が中心となって準備しているそうです。

海辺から始まる七ヶ浜の未来

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100名以上のボランティアスタッフが集まり、何ヶ月もかけて大きなフェスの成功に向けて力を合わせていくことは、関わる人々のつながりを深めます。スタッフには地元のひとだけではなく、住んでいる場所に関わらず、七ヶ浜の海を愛するひと、七ヶ浜の復興を応援しているひとがたくさんいます。

フェスの開催をとおして生まれた七ヶ浜町内外の垣根を越えた幅広い世代が集まるコミュニティは、ビーチクリーンやその他のイベントなど日常的に続くまちづくりの活動にもつながっています。

そしてフェスを開催することで、町外のひとが七ヶ浜のビーチに足を運びその魅力を感じてもらえるだけでなく、それを通して地元のひとたちも改めて七ヶ浜に誇りを持つことができます。 

久保田さんは、こう語ります。

『町も家も一緒だ、人がいないとダメになる』ーー2年前の3・11の時に地元の70代の漁師さんが言った一言です。この言葉は私を強烈に捉えました。人がいなければ悪くなる事も出気ないんだと強烈に思いました。しかし地域を見れば、そこには元々魅力があり、人が集まる癒す力がある。歴史的と土地と自分たちの役割を考えれば、自ずとやるべきこと、やりたいことが見えてきました。

このような場所で、このタイミングにやらせていただいている事にただただ感謝しかありません。30年後、変わった町を見て『町も家も一緒だ、人がいないとダメになる』っと次の世代に語っていきたいです。

このまちづくりのプロジェクトは、関わる人たちの強い想いが集まり、とても大きなエネルギーを持っています。

美しいビーチがシンボルである七ヶ浜町の海辺から始まる地域づくりは、これからよりよい七ヶ浜の未来をつくっていくことでしょう。

SEVEN BEACH FESTIVAL

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今年のSEVEN BEACH FESTIVALは8月2日に開催されます。

日時:2015年8月2日(日) 10時00分~19時30分
場所:宮城県七ヶ浜町菖蒲田浜特設会場
主催:SEVEN BEACH FESTIVAL 実行委員会

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工藤瑞穂。 「soar」プロジェクト代表・編集長、「HaTiDORi」代表、ダンサー、元日本赤十字社職員。1984年青森県生まれ。宮城教育大学卒、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。NPO法人ミラツク研究員、Webメディア「マチノコト」ライター。

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